おい。もう秋だな。
555 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 01:20:34
おい。もう秋だな。
風がだんだん冷たくなり、また空気が澄んで天が高くなる。
向日葵の残骸、いつの間にか聞こえなくなったセミの合唱。
懐かしいキンモクセイの香りが鼻を掠める。
すっかりクーラーの要らなくなった電車を降りて家路を急げば、
まだ冬は遠いというのに、なぜか夜風が身にしみる。
残業続きで疲れた体。
明るい家々の窓からは時折笑い声が聞こえ、残業から帰った夫に出したのだろう
シチューの良い香りがする。
変に凝ったものではなく、オーソドックスな、野菜たっぷりの鶏肉シチュー。
羨ましい。
俺は、さっきローソンで買った唐揚弁当のラップを破り、食うだけ。
独りで。
こんな毎日が続く。
この秋を乗り切っても、次にやってくるのは冬。
恋人に、配偶者に、親に、子供に、愛する人のために贈り物を選ぶ人々を尻目に、
俺は自分の欲望を満たすためだけの買い物をする。
「俺は自分の金は自分で全部使えるんだ、それが嬉しいんだ」
意識の外で自分に言い聞かせる。
愛する人のために身を削るのは、利己的に生きるよりずっと幸せなのだということに
気づかないふりをする。
愛情を惜しみなく周りに与えれば、空いた部分は幸せで満たされる。
愛情を自分だけに向けて疑い深く生きていれば、大切に抱えているその愛情が
価値の無いものへと変質していく。
一年中それが続く。
俺は幸せにはなれないと気づいた
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