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弟のスケッチブック

2010/12/15

弟の佑介が体を悪くした。

まだ6歳だった。

病室に行くと俺があげたスケッチブックに
いつも何かを書いていた。
俺がそれを見ようとすると怒った。

春風がまだ吹かないころに、あいつは6年の生涯を終えた。

空のベッドの上にあのスケッチブックがあった。
看護婦さんがおいてくれたらしい。
そのうえには手をつないだ4匹のカバの絵と
それぞれに家族の名前が書いてあった。

「そっか、あいつこれを一生懸命、描いていたのか」

カバはあいつがまだ元気だったころにいつも行った
動物園のお気に入りの動物だ。
どうやらそれは絵本になっているらしかった。
俺はページをめくった。どの絵も字もあいつなりに丁寧に書いてあった。

「おとうさんかば、おかあさんかば、にいちゃんかば、ぼく。

おとうさんかばは おおきなくちで おはようという

おかあさんかばは おおきなくちで おやすみという

にいちゃんかばは おおきなくちで あそぼうという

だから ぼくは おおきなくちで ばいばいっていう」

俺はすぐにそのスケッチブックをベッドにおいた。
大事なあいつの思い出を、目からどうしようもなく流れ出る
涙で汚さないように。

母さんも父さんもそれを見て狂うほど泣いていた。

「佑介?聞こえてる?
おにいちゃんかばにも
お前くらいの息子ができたよ?
佑介・・・まだあの絵本を見ると
涙が止まらないよ。
ごめんね。
バイバイできないよ。
ごめんね。」