宮崎さんと小銭さん

482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(金) 18:57:07


近所のスーパーに気になる女の子がいたんですよ。
おとなしくて伏目がちな、黒ぶちメガネの宮崎Aさん。

何がかわいいというわけでもないんだけど、真面目にレジ打ってる姿が微笑ましい。
宮崎Aさんは素朴さがいいんだけど、ときどきおしゃれなメガネになってたりして。
化粧はほとんどしてないけど。

髪型も、もさもさしてるかと思ったら、ぺたっとしてたりして、試行錯誤が伺えます。
で、けっきょくしっくりこないのか、すぐいつものもさださに戻ります。
何か、一言で言えばやっぱりそう、微笑ましいのです。
応援したくなる感じ。

口説くとか、お近づきになりたいとか、それほどのことではないです。
ただ、見るとほんわかしてしまう子でした。

俺は足し算が好きで得意なので、レジに行く間に自分で計算します。
で、小銭も多めに常備していて、いつもぴったりの金額を素早く出すのが昔からの習慣。

宮崎Aさんだけは必ず、素朴な笑顔で、
「いつもありがとうございます、助かります、すごいです」

と言ってくれる。他の人がレジだと、あんまりそんなこと言ってくれない。
買い物は週1か2程度だし、毎回会うわけでもないのに覚えてくれてるのが、嬉しかった。

一度だけ俺が計算を間違った時には、
「ちょっとこれ(レジスター)、調子悪いですね(笑)」

とニコッと笑ってくれた。
あいさつぐらいはちょこちょこする関係でした。


さて、名札に宮崎Aと書いてあるので、名前がわかったんだけど。
他の店員さんは、苗字だけなんですよ。
多分、他にも宮崎さんがいるんだろうな、と思った。
いました。宮崎B子さん。
区別のために、この2人は名札にフルネームなんですね。


で、たまたま一ヶ月、二ヶ月くらいかな?
しばらくスーパーに行かないことがあったんですけど、久しぶりに行った。

レジが宮崎B子さんだったんだけど、名札が苗字だけ。ただの宮崎になってる…。
宮崎Aさんの姿は見当たらなかった。

一瞬の内に、こんな推理が成り立った。
あの宮崎Aさんは辞めてしまった?
宮崎B子さんと区別する必要がなくなった?
だからB子さんの名札が苗字だけになった?
 
…そうか、辞めちゃったのか。なんだかとても寂しくなりました。
その後何回かスーパーに行っても、宮崎Aさんを見ることはありませんでした。
 
 
ある日、5歳の姪っ子を子守しながら、そのスーパーに行くことがあって。
姪子は1人で走りまわって、お菓子売り場に行ってしまいました。

あわてて追いかけると、そこで商品を入れ替えている店員さんがいました。
姪子がその人のそばにじっと立って見ているので、迷惑だろうと思い、

「どうもすみません。ほら、こっちおいで」

「あ、いえ、大丈夫です…あっ」

宮崎Aさんでした!
目を合わせたまま二人ともちょっと無言になってしまいました。

姪子「ともだちなの?」

俺「ともだちというか、この人はスーパーの、あれ?」

名札が高岡さんになってた。

また一瞬の内にこんな推理をした。
彼女をレジで見なくなったのは、レジ係メインじゃなくなったから。
今まで売り場で見なかったのもたまたま。割と大きな店だから。
で、名前が変わったのは、結婚したから。
結婚にはまだ早いような?20歳そこそこだと思ってたけど。

もう1人の宮崎さんの名札も、それに伴ってわざわざ苗字だけのに変えたのかなと。

結婚したのかあ。
悔しいのもあったけど、素直に良かったなあ、とも思いました。

彼女も仕事中だから、話しかけようとはおもわないんだけど、一言だけ。
「ご結婚されたんですか、おめでとうございます…」

「いえ、あの、離婚、したんですよ…」

…エーッ!
結婚にも早い年齢に見えたけど、まさか。
失礼なことを言ってしまったんだな。

「うわ、すみません…」

「いえ、全然」

気まずいまま逃げるようにその場をあとにしました。
 
 
後日、スーパーが混雑する時間帯。
あまりレジに立たなくなってた宮崎(高岡)さんが、フォローのためレジにいました。

そのレジを選んで、並びながら、もう一度改めて謝ろうかとどうしようかと。
余計なお世話かなとか思ってたら、忙しいのに彼女から話しかけてきたんですよ。

「今日はお子さんは?」

「あ、あれは姪っ子で、俺は独身で」

「あっ、そうなんですか!」

嬉しそうに見えたのは、俺の自意識過剰というもんです。

スーパーに行って彼女が見せる笑顔が、俺にだけ明るいように見えるのも自意識過剰というもんです。

あいさつ程度だった会話だけど、彼女の方から少し長く話すようになってくれたのも、自意識過剰というもんですよね。

いつの間にか店員さんの間で俺は、小銭さんというあだ名がついていて、ある店員さんが彼女に
「ほら小銭さん来たよ、あいさつして来たら」
ってこっそり言ってるのが聞こえたような気がしたのも、自意識過剰です。

思い切って電話番号とアドレス書いたメモを渡したら、連絡が来て、楽しく話ができたのも、多分夢だと思います。

デートもしたけどあれも夢だったような気がします。

宮崎さんが高岡さんになって1年。
また彼女の苗字が変わるのも、そう遠くはないかもと夢見ている今日この頃。