【映画】逆転のトライアングル:現代における皮肉に満ち溢れた超ブラックなコメディ作品
現代の様々な格差や分断をこれでもかとてんこ盛り。カンヌ映画祭パルムドールも納得の、大変皮肉に満ちた傑作エンタメ作品でした。
あらすじやネタバレなし感想を書いています。
逆転のトライアングル:あらすじ
モデルでインフルエンサーのヤヤは、恋人である男性モデルのカールと共に豪華客船のクルーズ旅行に招待される。リッチでクセの強い乗客はゴージャスな船旅を堪能し、客室乗務員は彼らから高額のチップをもらおうと笑顔を振りまきながら要望に応えていたが、ある夜に船が難破する。さらに海賊に襲われ、無人島に流れ着いた乗員乗客たちが食料、水、そしてSNSのない状況にあえぐ中、トイレ清掃員が圧倒的なサバイバル能力を発揮する。
逆転のトライアングル:解説・公式サイト
第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したコメディー。難破した豪華客船の乗客と乗員たちが漂着した無人島でサバイバル生活を送るうちに、思わぬ逆転現象が生じる。監督は『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などのリューベン・オストルンド。『ブルックリンの片隅で』などのハリス・ディキンソン、『ドント・スリープ 蘇る悪夢』などのチャールビ・ディーンのほか、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソンらが出演する。
逆転のトライアングル:キャスト・スタッフ
チャールビ・ディーン(ヤヤ)
ハリス・ディキンソン(カール)
ウディ・ハレルソン(船長)
ズラッコ・ブリッチ(ディミトリ)
ヴィッキ・ベルリン(ポーラ)
ドリー・デ・レオン(アビゲイル)
ヘンリク・ドルシン(ヤルモ)
ジャン=クリストフ・フォリー(ネルソン)
イリス・ベルベン(テレサ)
ズニー・メレス(ベラ)
アマンダ・ウォーカー(クレメンティン)
オリヴァー・フォード・デイヴィス(ウィンストン)
監督・脚本:リューベン・オストルンド
撮影:フレドリック・ウェンツェル
逆転のトライアングル:予告編
逆転のトライアングル:ネタバレなし感想
現代の様々な格差や分断をこれでもかとてんこ盛り。
3パートに分かれているシーンの落差が凄すぎる、そしてバリエーション豊かな登場人物の超人間味溢れる描かれ方がブラック過ぎるw
観ている者を最高に気まずい気持ちにさせる演出は前作「フレンチアルプスで起きたこと」でも立証済みの、リューベン・オストルンド監督の得意とするところでしょう。
フレンチアルプスで起きたことは夫婦倦怠モノとしては屈指の作品です。逃げ道のなさ、いたたまれなさという点ではこちらの方が上かもしれません。
今回の「逆転のトライアングル」も、ほぼ誰にも共感できないように緻密に構成された脚本が本当に素晴らしいです。ジェンダー、特に男性性について強く言及している他作品ではあまり観られないオストルンド監督の作家性なのだと思われます。
そして劇伴と効果音。いたたまれないシーンではそれを増長するかのような絶妙な効果音をこれでもかと鳴らす嫌過ぎる演出がキツいです(褒めてます)
共感できない、とは書きましたが、注意深く観ているとどの人物もそれぞれの立場でまっとうに行動しているように見え、
「もし自分だったら同じことをしていたかもしれない」
と思えてしまうバランスでキャラクターを描いているのは流石と言えます。
冒頭の、主人公カールとヤヤの、「レストランでどちらが会計をするか」のシーンからのエレベーターでのくだらない揉め事。
ただの意地の張り合いが増長してしまうのを経験したことがきっと経験ある人も多いと思います。カップルや夫婦で観るのはとてもオススメしません。
そして様々な事が重なりとんでもない展開を見せる、話題の阿鼻叫喚シーンはとても素直に爆笑できるものではなく、観る人を選ぶかもしれません(褒めてます)
様々な思いが錯綜する無人島シーンのラスト、観た人と語りたくなる素晴らしい切れ味でした。
カンヌ映画祭パルムドールも納得の、大変皮肉に満ちたエンタメ作品でした。
セレブものブラックコメディの傑作:ホワイトロータス
逆転のトライアングルを観てまっさきに思い出したのが2022年のエミー賞を総ナメした「ホワイトロータス – 諸事情だらけのリゾートホテル」(U-NEXTで配信中)
シーズン2も絶好調、逆転のトライアングル以上にシニカルで笑うに笑えないストーリーに苦笑いしてしまうこと間違いなしの傑作ドラマです。こちらもめちゃくちゃオススメです。
セレブもの最高峰:メディア王~華麗なる一族
そしてHBOの名作ドラマ「メディア王」。ファイナルシーズンが2023年にスタートするのが楽しみです。この手の作品ではブッチギリの面白さ。またあの一切共感できない家族によるスケールの大きな喧嘩を観れるのは本当に嬉しいです。こちらも是非。
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