ジュリア・ロバーツ主演『アフター・ザ・ハント』MeToo時代の大学キャンパス、権力構造と世代間対立を描く傑作心理ドラマ

2025/12/07映画・ドラマPrimeVideo

名門大学で哲学を教えるアルマは、精神科医の夫と穏やかな生活を送っていたが、同僚ハンク助教授が教え子マギーから性的行為を告発されたことをきっかけに、彼女自身の過去の秘密と向き合わざるを得なくなる。真実を語るのか、沈黙を貫くのか――キャリアと人生を賭けた葛藤に追い込まれる、ルカ・グァダニーノ監督による心理スリラー。

1. アフター・ザ・ハント：ネタバレなし感想
2. アフター・ザ・ハント：作品詳細
3. アフター・ザ・ハント：予告
4. アフター・ザ・ハント：キャスト・スタッフ
5. アフター・ザ・ハント：あらすじ
6. アフター・ザ・ハント：解説
7. アフター・ザ・ハント：関連サイト
8. アフター・ザ・ハント：配信

アフター・ザ・ハント：ネタバレなし感想

現代における、Z世代と老害さんの大きな溝を描いたヒューマンドラマ。

哲学を武器に徹底的に向き合い議論する（いがみ合う）二人を演じた、名優ジュリア・ロバーツとTHE BEARで超好演していたアヨ・エデビリ(完璧過ぎるイヤな役っぷり)による、猛烈な演技合戦に痺れまくりでした。

どんな年齢層や性差にも響くような作りと、観れば語りたいことが溢れるフラットで秀逸な演出が素晴らしかったです。

アフター・ザ・ハント：作品詳細

原題：After the Hunt　製作年：2025年　日本公開日：2025年12月12日　製作国：アメリカ
上映時間：138分　ジャンル：心理サスペンス／ドラマ　配給：東宝東和

アフター・ザ・ハント：予告

アフター・ザ・ハント：キャスト・スタッフ

キャスト

ジュリア・ロバーツ（アルマ・イムホフ／イェール大学哲学教授）
アヨ・エデビリ（マギー・レズニック／優秀な大学院生）
アンドリュー・ガーフィールド（ハンク・ギブソン／アルマの同僚助教授）
マイケル・スタールバーグ（フレデリック・イムホフ／アルマの夫、精神科医）
クロエ・セヴィニー（キム・セイヤーズ博士／アルマの同僚）
リオ・メヒエル（アレックス／学生）
デイヴィッド・リーバー（ディーン・トーマス／学部長）

スタッフ

監督・製作：ルカ・グァダニーノ
脚本：ノラ・ギャレット（長編脚本家デビュー作、2023年ブラックリスト入選）
製作：ジェブ・ブロディ、ブライアン・グレイザー、アラン・マンデルバウム
製作総指揮：アリス・ドーソン、ノラ・ギャレット
撮影監督：サヨムプー・ムックディープローム
編集：マルコ・コスタンツォ
音楽：トレント・レズナー、アッティカス・ロス
美術：インゲ・ヴァン・ブリュッヘン

アフター・ザ・ハント：あらすじ

2019年9月、イェール大学で哲学を教えるアルマ・イムホフは、長期医療休暇から職場復帰して間もない多忙な日々を送っていた。精神科医の夫フレデリックとの生活は平穏で、彼女は学生たちから尊敬を集める教授として、同僚のハンク・ギブソンとも友人として関係を築いていた。

ある夜のディナーパーティで、アルマの優秀な弟子である大学院生マギーが参加する。翌日、うつろな表情のマギーがアルマの家を訪ね、ハンクから性的行為を受けたと告白。アルマは同情を示しつつも、具体的な支援には及び腰になる。同時にハンクに直接話を聞くと、彼は疑惑を否定しつつも行動の曖昧性を認め、一方でマギーの学位論文に盗用がないか暗に示唆し始める。

アルマは学生と同僚の間で引き裂かれ、大学当局やメディア、SNSの圧力にさらされながら、自身の過去の暗い秘密――かつての不適切な行為と関連する出来事が明らかになることへの恐怖――と対峙することになる。真実を語るべきか、沈黙を貫くべきか、アルマのキャリアと人生の両方が危機に瀕する。

アフター・ザ・ハント：解説

『君の名前で僕を呼んで』『チャレンジャーズ』で知られるルカ・グァダニーノ監督による心理スリラー。大学という閉じられたコミュニティを舞台に、権力構造、MeToo以降の告発文化、世代間の分断、そして真実の曖昧性を多層的に描く。

脚本は映画に常に登場しながらも「正義」と「自己保身」の狭間で揺れ動く。グァダニーノは意図的に事件そのものを直接的には映さず、証言と視線、そして登場人物たちの微妙な表情変化だけで構成することで、観客にも「何を信じるのか」を最後まで選択させないシステムを構築している。エンドロール後に監督自身の声が入る大胆な演出は、映画が「パフォーマンス」であることを直裁に示唆し、それまでの物語の「信頼性」そのものを問い直させる。ジュリア・ロバーツは138分の大半を占める画面で、理性と感情、理想と現実が交差する人物を、抑制された演技で深く体現している。