アリ・アスター監督『エディントンへようこそ』コロナ禍のSNS・陰謀論・暴力が渦巻く小さな町の破滅

コロナ禍のロックダウンで息苦しい隔離生活を強いられた小さな町エディントン。保安官ジョーと市長テッドのマスク着用をめぐる小競り合いから市長選へと発展した対立が、やがてSNSのフェイクニュース、陰謀論、暴力へと拡大していく。鬼才アリ・アスター監督が描く現代社会の狂気と破滅のスリラー。
エディントンへようこそ:ネタバレなし感想
マスクするしないで揉める市長(ペドロ・パスカル)と保安官(ホアキン・フェニックス)、スーパーの入場制限とソーシャルディスタンス。冒頭のシーンでコロナ禍のあの頃を一気に思い出しました。

アリ・アスター監督の過去作とはかなりカラーが違うものの、不安を煽るあのいやーな感じ(褒めています)は健在、
コーエン作品を彷彿とさせるエンターテインメント性もある「面白くて残酷、かつバカバカしい」傑作ブラックコメディでした。

アメリカのコロナ禍でロックダウンしたニューメキシコ州の田舎町(ブレイキング・バッド&ベター・コール・ソウルで登場した赤茶色の建物が立ち並ぶ風景にグッと来ました)を舞台に、様々な分断・陰謀論・BLM・カルトなどを風刺した人間模様、SNSが引き起こすアメリカ社会の崩壊がフラットな視点で描かれており、面白くも怖すぎる…。
当時のアメリカに起こった事が、どの程度の誇張があるのか、それぞれの勢力のありようなど、若干難解な部分も多かったです。
色んなメタファーがあるようですが、ジョーが乗るパトカーを改造した街宣車は、なんと「ゆきゆきて、神軍」のアレらしいですw

アリ・アスター監督は古い日本映画も研究してると公言してますね。
エディントンへようこそ:作品詳細
原題:Eddington 製作年:2025年 日本公開日:2025年12月12日 製作国:アメリカ 上映時間:148分
ジャンル:スリラー/社会派ドラマ 配給:ハピネットファントム・スタジオ
エディントンへようこそ:予告
エディントンへようこそ:キャスト・スタッフ
- ホアキン・フェニックス(ジョー・クロス/マスク非着用派の保安官)
- ペドロ・パスカル(テッド・ガルシア/IT企業誘致を推進する市長)
- エマ・ストーン(ルイーズ・クロス/ジョーの妻、陰謀論にのめり込む)
- オースティン・バトラー(ヴァーノン・ジェファーソン・ピーク/カルト教祖)
- ルーク・グライムス(ガイ・トゥーリー)
- ディードル・オコンネル(ドーン・ボッドキン/ルイーズの母)
- マイケル・ウォード(マイケル・クーク)
- アメリー・フーファーレ(サラ)
- クリフトン・コリンズ・Jr(ロッジ)
- ウィリアム・ベルー(バタフライ)
- 監督・脚本:アリ・アスター
- 製作:ラース・クヌードセン、アリ・アスター、アン・ロアク
- 製作総指揮:レン・ブラバトニック、ダニー・コーエン、ティモ・アルジランダー、アンドレア・スカルソ、ハリソン・ハフマン、アレハンドロ・デ・レオン、タイラー・カンペローネ
- 撮影:ダリウス・コンジ
- 美術:エリオット・ホステッター
- 衣装:アンナ・テラサス
- 編集:ルシアン・ジョンストン
- 音楽:ボビー・クルリック、ダニエル・ペンバートン
エディントンへようこそ:あらすじ
2020年5月、ニューメキシコ州の小さな町エディントン。コロナ禍のロックダウンで住民たちは息苦しい隔離生活を強いられ、不満と不安は爆発寸前だった。保安官ジョーは、マスク着用やソーシャルディスタンスを徹底し再選を狙う市長テッドとマスク非着用をめぐる小競り合いから対立し、突如市長選に立候補する。
ジョーとテッドの争いの火は町全体へと燃え広がり、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同時に、ジョーの妻ルイーズはカルト教祖ヴァーノンの扇動動画に心を奪われ、陰謀論にのめり込んでいく。疑い、論争、憤怒が渦巻き、暴力が暴力を呼び、批判と陰謀が真実を覆い尽くす中で、エディントンの町は誰も予想できない破滅へと向かっていく。
エディントンへようこそ:解説
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』の鬼才アリ・アスター監督による長編4作目。コロナ禍の実在する不安と分裂を背景に、現代社会のSNS、陰謀論、暴力の連鎖を冷徹に描く。ホアキン・フェニックスの疲弊と迷走、ペドロ・パスカルの野心の暴走、エマ・ストーンの陰謀論への転落、オースティン・バトラーのカルト教祖による扇動など、実力派キャストが個性的なキャラクターを体現。第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
エディントンへようこそ:関連サイト
- 公式サイト:https://a24jp.com/films/eddington/
- 映画.com:https://eiga.com/movie/103724/
- Filmarks:https://filmarks.com/movies/122272
- JustWatch:https://www.justwatch.com/jp/映画/eddington
- IMDb:https://www.imdb.com/title/tt29918352/
- 『エディントンへようこそ』アリ・アスター監督×北村匠海、その目で見つめているものとは「世界のとらえ方が似ているかもしれない」【究極の対談】 | FILMAGA:https://filmaga.filmarks.com/articles/329149/
- 映画『エディントンへようこそ』アリ・アスター × 山中瑶子【対談】──パンデミック後の世界で、何を問い続けるのか|Tokyo Art Beat:https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/eddington-interview-202512
- 【対談】アリ・アスター × 板垣巴留「映画と漫画、それぞれの“描き方”」 | Numero TOKYO:https://numero.jp/interview474/
- 「インターネットは面白くて残酷で、“バカバカしい”」鬼才アリ・アスターが最新作で描いたのは、異なる情報で別の現実を生きる人間同士の闘い【映画『エディントンへようこそ』】 | 文春オンライン :https://bunshun.jp/articles/-/84265
- 『エディントンへようこそ』、分断と対立のカオス【えのきどいちろうの映画あかさたな Vol.93】|CINEMORE:https://cinemore.jp/jp/news-feature/4308/article_p1.html
- アリ・アスターに聞く新作『エディントンへようこそ』。「私たちはSNSがつくり出した世界に生きている」 | CINRA: https://www.cinra.net/article/202512-eddington_imgwyk
- 『エディントンへようこそ』アリ・アスター監督 単独インタビュー解説 ─ 「ホアキンには危険なところがある、だから面白い」 | THE RIVER:https://theriver.jp/eddington-aster-interview/
- 映画『エディントンへようこそ』──「インターネットという新しい法律によって変容する現代は、まるで西部開拓時代のよう」と語る監督アリ・アスターの想い | GQ JAPAN:https://www.gqjapan.jp/article/20251210-eddington-ari-aster-interview
アトロク試写会の上映後トークショー(宇多丸 X 宇垣美里 X 村山章)がとても良かったです。
来場者の質問はいらなかったですね。かなり濃いめの痛い映画ファン…w
フィクション作品の中の登場人物の行動に対して物申す人の気持ちがわかりません。「そういう人」として描いてるのに、それに対して物申すタイプのシネフィルの多いこと…
宇野維正さんの評もよかったです。こちらは観る前に聴いておくと理解が深まります。
そしてネタバレ全開の監督インタビュー。このインタビューが一番腑に落ちました。
“不快さ”をエンタメにするアリ・アスターの強い意志。『エディントンへようこそ』の狙いとその達成【宇野維正の「映画のことは監督に訊け」】|MOVIE WALKER PRESS:https://press.moviewalker.jp/news/article/1313378/
エディントンへようこそ:配信
配信はまだありません。
エディントンへようこそ:SNSでの主なユーザーレビュー
「アリ・アスター監督の作風の中でも最も現実的なテーマを扱いながら、その不穏さと不条理は変わらない。ホアキン・フェニックスの疲弊した表情、エマ・ストーンの陰謀論への堕落、ペドロ・パスカルの野心の暴露…複数の視点から描かれるエディントンの崩壊が、我々の現実と離れていないことに戦慄した。」
「コロナ禍という誰もが経験した時代背景が強みになっている。SNSの暴走、分裂する価値観、陰謀論という現代的脅威を、一つの町で凝縮させた手腕が秀逸。148分の長さを感じさせない緊迫感。」
「イデオロギーの対立が個人レベルで家族を割く様相、小さな町での政治戦が全米的なカオスへと発展する過程。アスター監督は『ここに現在の社会がある』と突きつける。ホラーと同じくらい恐ろしい現実映画。」
「政治的立場や信念の違いが、どう破壊と暴力につながるのか。極端ではあるが『あり得る』という怖さ。エマ・ストーンがカルト教祖の扇動に取り込まれていく過程が最も不安定で、人間の脆さを感じさせる。」
「アリ・アスター最近作の中で最も直接的で社会的。しかし彼独特の美学と不条理感は失われていない。長編ながら、コマ数、編集、音楽で引き込む力があり、見応えのある傑作だ。」

















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