大傑作「ふつうの子ども」:呉美保監督最新作。10歳の子どもたちが起こす環境活動が大騒動へ

『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』で高く評価された呉美保監督と脚本家・高田亮が3度目のタッグを組んだ『ふつうの子ども』は、10歳の小学4年生・唯士と、彼の同級生たちが環境問題をきっかけに展開させる奇想天外な日常を描いた人間ドラマ。好きな女の子の言葉に翻弄される男の子、環境問題に真摯に取り組む女の子、そしてクラスの問題児の3人が紡ぎ出す友情と葛藤。子役たちの自然な演技と、監督が細部にこだわった映像表現が生み出す、令和の子どもたちの等身大の姿は、大人の心にも深く刻み込まれる傑作です。
ふつうの子ども:ネタバレなし感想
天才子役 嶋田鉄太くん主演作品。気が付けば彼の一挙手一投足に目が行ってしまいます。行動を共にする二人(瑠璃、味元耀大)も素晴らしく、

純粋で気弱な男子、強気で聡明な女子、粗暴で明るい男子の王道的な3人で展開するストーリーがとても良いです。

呉美保監督の演出もあるとは思うのですが、とにかく舌を巻くほどのナチュラルさに感動。
突然輪をかき乱す子、やたら大人びてる子、群れて行動する子、悪事を自白しちゃう子…子どもならでのアレな行動がリアルに描かれていて大変グッときました。
後半ハイライトのいたたまれない面談シーンは、それぞれの親子の事情も浮き彫りになる屈指の名シーンでした。
折に触れ観たくなる作品がまた一つ増えました。
ふつうの子ども:作品詳細
製作年:2025 公開日:2025年9月5日 製作国:日本 上映時間:96分
ジャンル:ドラマ 配給:murmur レーティング:G
ふつうの子ども:予告
ふつうの子ども:キャスト・スタッフ
- 嶋田鉄太(上田唯士)
- 瑠璃(三宅心愛)
- 味元耀大(橋本陽斗)
- 蒼井優(上田恵子)
- 風間俊介(浅井)
- 瀧内公美(三宅冬)
- 少路勇介(クラスメイト役)
- 大熊大貴(クラスメイト役)
- 長峰くみ(クラスメイト役)
- 林田茶愛美(クラスメイト役)
- 監督:呉美保
- 脚本:高田亮
- 企画・プロデューサー:菅野和佳奈
- 音楽:田中拓人
- 撮影:田中創
- 照明:溝口知
- 録音:小清水健治
- 美術:鈴木俊彦
- 衣装:平田雅幸
- 編集:木村佳代子
ふつうの子ども:あらすじ
上田唯士、10歳、小学4年生。両親と三人家族で、おなかが空いたらごはんを食べる、いたってふつうの男の子。生き物係としてクラスで過ごす日々の中、最近は同じクラスの三宅心愛のことが気になっている。環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる心愛の作文に感銘を受けた唯士は、彼女に近づこうと奮闘する。しかし心愛が心をひかれているのは、クラスの問題児・橋本陽斗だった。そんな三人が心愛の提案で始めた環境活動は、最初はビラ配りなど小さなものだったが、やがて町全体を巻き込んだ大騒動へと思わぬ方向に転がり出していく。子どもたちの純粋な想いと行動が生み出す波紋は、親たちや大人社会にも次々と影響を与え、やがて予測不能な事態へと発展していく。
ふつうの子ども:解説
呉美保監督は子育ての経験を通じて、目の前のことだけをひたすら追いかける子どもたちの短絡的だが魅力的な姿に惹かれ、この作品の製作を決意した。脚本の高田亮も小学校への取材を重ね、オリジナルのストーリーを創作。子どもを持つ二人の創作者だからこそ描ける、ステレオタイプに陥らない等身大の子ども像が本作の核となっている。
主人公・唯士を演じる嶋田鉄太は、前作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で呉監督に見出された逸材で、本作では初主演を果たす。瑠璃は本格的な演技は本作が初となるながらも、堂々とした存在感を放つ。味元耀大は、ドラマの主演経験を経て、やんちゃでありながらも人間らしい陽斗を演じた。
脇を固める大人のキャストも豪華である。蒼井優は主人公の母親・恵子を、育児に悩みながらも子どもを信じ褒めて伸ばそうとする温かみのある母親像で演じ、風間俊介は担任教師・浅井として不完全ながらも生徒たちを見守る大人の姿勢を体現。瀧内公美は心愛の母親・冬を、子どもとは異なる価値観で行動する親の複雑さを表現した。
クラスメイトはすべてオーディションで選ばれ、29人の多様なキャラクターが編成された。撮影現場では呉監督がワークショップを通じて子どもたちと時間を共にし、それぞれのキャラクターを丁寧に構築。撮影監督・田中創による背景をソフトフォーカスさせた映像は、往年のハリウッド映画を思わせる優雅な光が子どもたちの顔を照らし出す。子どもたちの尊厳と輝きを映す映像表現が、この作品の詩情を生み出している。
ふつうの子ども:関連サイト
- 公式サイト:https://kodomo-film.com
- 映画.com:https://eiga.com/movie/103556/
- Filmarks:https://filmarks.com/movies/121611
- JustWatch:https://www.justwatch.com/jp/%E6%98%A0%E7%94%BB/hutsuunozi-domo
- IMDb:https://www.imdb.com/title/tt36057265/
- 『ふつうの子ども』呉美保監督 演出相手はキャストとスタッフ両方です 【Director’s Interview Vol.514】|CINEMORE:https://cinemore.jp/jp/news-feature/4161/article_p1.html
- Creators’ Station『子育てを経たからこそ描けた映画『ふつうの子ども』働きやすい現場から生まれた"子どもファースト"の物語』:https://www.creators-station.jp/interview/curiousity/256033
- Pintscope『蒼井優×呉美保監督インタビュー』:https://www.pintscope.com/interview/aoi-o/
- ciatr『【呉美保監督に聞く】『ふつうの子ども』制作秘話!唯士役・嶋田鉄太』:https://www.youtube.com/watch?v=C9HECNp9yOE
ふつうの子ども:配信
ふつうの子ども:SNSでの主なユーザーレビュー
「最高に小学生の映画。自分が小学生の頃を思い出す。完璧に小学生4年生のどこにでもいる、ふつうの子ども。好きな子の考えに傾倒したり、ダンゴムシとワラジムシを探したり、駄菓子買ったり。いつかの自分を重ねたり、好きって気持ちのせいでおかしな方向へと向かってしまい、事件が起こることもあった。自分が小学生だったあの頃の感覚が蘇った。心愛と唯士と陽斗の三人の関係が切なくて、大人になってこんなに切ない気持ちになるとは思わなかった。」
「いくらなんでも良すぎない?良すぎた。先生に呼ばれて別室に連れていかれる時間、まじで世界の終わりかと思うくらい怖いんだよなーとめちゃくちゃ思い出した。ほんで自分じゃない方の子がドカ泣きしてるとその恐怖は余計に増すし、どうにか喋らなきゃと思っても全部が怒られる材料になる気がして何も話せないあの感覚。あの映画の中で完全に再現されていた。光の使い方、映像の美しさ、子役たちのピュアな演技、すべてが完璧で、涙が止まらなかった。」
「ひとりの人物にフォーカスすることは、その傍らに居る人たちを描くことになる。だから豊かな群像劇になる。『ふつうの子ども』の最大の成果は撮影にある。背景を飛ばし、ソフトフォーカスな映像で子どもたちの『顔』を映し出す。まるで往年のハリウッドのスターを映し出すかのようなその絵に驚嘆した。その時、たまたまめぐり合わせた三人が迷うことなく挑戦する。その様がなんとも心地良い。」
「物語全体を通じて、『ふつうとは何か』を考えさせられる作品でした。子どもが裏山や公園で遊ぶのは昔から『ふつう』でしたが、今では外で遊ぶ子どもの姿はむしろ珍しい。心愛のように大人びた子もいれば、陽斗のようにやんちゃな子もいる。つまり『ふつう』には幅があり、『ふつうじゃない』ことを探すほうが難しいのかもしれません。互いの『ふつう』を認め合い、尊重することこそ大切なのだと改めて感じさせられる作品。」
「この映画での『ふつう』は、『普通』と『不通』の二つが入り混じっている。十歳の少年が同級生の少女を好きになる。きわめて『普通』だ。しかしその少女は他の少年が好きで少年の恋心は彼女には『不通』だ。攻められる子どもは大人を攻める『普通』ではないか。見守ってくれる少年は『普通』にぼそぼそと理由を明かすことができる。ラストシーン、少女は少年に微笑み、言葉にせず口パクするが伝わらない。少女の顔は『普通』にうれしいという感情にあふれていた。」
















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