『おんどりの鳴く前に』村の権力構造が社会的圧力でイリエを蝕む。正義を失わせるまでの過程を鮮烈に描いたサスペンス

ルーマニアの若手注目監督パウル・ネゴエスク長編デビュー作『おんどりの鳴く前に』は、辺境の村で起きた惨殺事件を通して人間の本質的な醜悪さと、狭いコミュニティ内における権力と沈黙のメカニズムを冷徹に描いた傑作サスペンス。ルーマニア・アカデミー賞(GOPO賞)作品賞・監督賞・主演男優賞を含む6冠に輝き、国際映画祭でも高く評価された本作が、ついに日本上陸。野心を失った中年警察官が、平穏な第2の人生を望んでいたにもかかわらず、ひとつの殺人事件によって腐敗した村の深い闇に引き込まれていく——社会風刺を交えた緊迫のヒューマン・サスペンスの傑作です。
おんどりの鳴く前に:ネタバレなし感想
ルーマニアの田舎を舞台にしたクライムムービーでとっても面白かったです。
ラストが!タランティーノが!
という触れ込みどおり、レザボアドッグスやファーゴを彷彿とさせるシーンがいくつかありますが、
期待し過ぎずにノワール作品として楽しむのがオススメです。
グダグダだった主人公の苦悩と決心を描いた終盤の展開は大変グッときました。
おんどりの鳴く前に:作品詳細
原題:Oameni de treabă(英題:People of Action) 製作年:2022年 公開日:2025年1月24日
製作国:ルーマニア・ブルガリア合作 上映時間:106分 ジャンル:サスペンス/ドラマ
配給:カルチュアルライフ レーティング:PG12
おんどりの鳴く前に:予告
おんどりの鳴く前に:キャスト・スタッフ
- ユリアン・ポステルニク(イリエ)
- ヴァシレ・ムラル(ヴァリ)
- アンゲル・ダミアン(ヴァリ)
- クリナ・セムチウク(クリスティナ)
- オアナ・トゥドル(イリエの元妻・モナ)
- ヴィタリエ・ビキル(コルネル / イリエの兄)
- 監督・製作:パウル・ネゴエスク
- 脚本:ラドゥ・ロマニューク、オアナ・トゥドル
- 撮影:アナ・ドラギチ
- 美術:バニナ・ジェレバ
- 編集:エウジェン・ケレメン
- 音楽:マリウス・レフタラチェ
おんどりの鳴く前に:あらすじ
ルーマニア北東部のモルドヴァ地方、自然に囲まれた静かな村。中年警察官イリエは、野心を失い鬱屈とした日々を送っていた。彼の唯一の願いは、果樹園を営みながら、ひっそりと第2の人生を送ることだった。不動産仲介人に家を売却し、市長の紹介で将来的に自分のものになるはずの果樹園の土地が見つかったかに思えた。だが、そんな矢先、平和なはずの村で起きたのは、斧で頭を割られた惨殺事件だった。
捜査を任されたイリエは、やがて美しい村に潜む深い闇を次々と目の当たりにしていく。市長や牧師といった村の有力者たちは事件を『事故』として処理しようと画策し、殺害された男の妻は復讐を求めている。村の権力構造に翻弄されながらも、イリエは真実に向き合う道を模索する。だが、真実を明かそうとするたびに、彼の第2の人生計画は崩れ去っていく。正義感を失った警察官が、衝撃の結末にたどり着くとき、映画は最高潮を迎える。
おんどりの鳴く前に:解説
本作の最大の特徴は、タイトル「おんどりの鳴く前に」が持つ象徴的な意味にある。キリスト教における「ペテロの裏切り」の故事に由来するこのタイトルは、誰もが正義を知りながらも、社会的圧力と自己保身のために、その正義を踏みにじる人間の本質を表現している。
監督パウル・ネゴエスクは、ルーマニアン・シネマの新星として、欲望と正義の狭間で揺れる主人公の心理を社会風刺を交えながら巧みに表現した。映像は控えめでありながらも、ゆっくりと忍び寄る恐怖と絶望感を観客に伝え、田舎の村という狭いコミュニティ内における「見えない圧力」の残酷さを実感させる。
主演のユリアン・ポステルニクは、GOPO賞主演男優賞のほか、2022年のナミュール国際映画祭とコトブス映画祭の最優秀演技賞に輝いた。彼の演技は、理想と現実のズレに苦しみながらも、次第に腐敗へと加担していく警察官の心理の細微な変化を見事に体現している。沈鬱で退廃的な表情、焦燥感に満ちた眼差しは、観客の心を深く揺さぶる。
ヴァシレ・ムラル演じるヴァリは、村の権力構造を体現する市長を、一見すると紳士的でありながらも、本質的には腐敗した人物として表現。彼とイリエの対峙は、映画の中核を形成する。クリナ・セムチウク演じる未亡人クリスティナは、夫の死に対する復讐の念に駆られながらも、社会の圧力に屈していく女性を複雑に演じている。
映像表現も秀逸である。ルーマニアの自然は美しく映される一方で、その美しさの裏に隠された村の闇は、カメラの引きや暗い色調によって表現される。長くゆっくりとしたテンポで物語が進み、観客の心理的な疲弊を意図的に演出することで、主人公と観客が共に苦悩する構造を実現している。
本作は、単なるミステリー・サスペンスではなく、現代社会における「沈黙の共謀」と「システムの腐敗」を問い直す社会派ドラマとなっている。ラストの衝撃的な展開は、正義感を持ちながらも結果的に悪に加担してしまう人間の矛盾を浮き彫りにし、映画は終わる。
おんどりの鳴く前に:関連サイト
- 公式サイト:https://culturallife.co.jp/ondori-movie/
- 映画.com:https://eiga.com/movie/102746/
- Filmarks:https://filmarks.com/movies/119293
- JustWatch:https://www.justwatch.com/jp/%E6%98%A0%E7%94%BB/men-of-deeds
- IMDb:https://www.imdb.com/title/tt14820500
おんどりの鳴く前に:配信
おんどりの鳴く前に:SNSでの主なユーザーレビュー
「ルーマニアの片田舎の殺人事件が引き金となるグダグダ劇。何もかもがうまくいかない。でも頭は果樹園のこともあるし、と振り回されてる間も結局何も解決せず、誰も満足しない展開でむしろややこしくなる一方。もう混乱の果てに踏み外す。片田舎の『村社会』や権力構造が出来上がってる場所での事件の処理の曖昧さが招く混乱と破滅。もはや、何が正義で悪なのかさえも判断ができなくなっていて、明らかに思考がオーバフローして事件も人も破綻している人間サスペンス。」
「田舎の村の嫌な感じが出てる。じっとりとした雰囲気で、村社会における権力構造とそれがもたらす歪みを鮮烈に描いている。主人公の疲弊と焦燥感がじわじわと伝わってくる。ラストの衝撃展開は映画史に残るレベル。」
「小心者で長い物には巻かれろ主義の田舎警察官イリエに序盤はイライラ。中盤で元は正義感の強い警官だったことが判明し、最後はその正義感を取り戻して村の暗部に立ち向かう展開は良かった。」
「ゆっくりとしたテンポながらもじわじわと忍び寄る恐怖と絶望感。観客も主人公と共に苦悩させられる構造が秀逸。美しいルーマニアの自然の裏に隠された村の闇を見事に表現している。」
「タランティーノ×リューベン・オストルンドという表現が的確。辺境のコミュニティで起きる腐敗の構造が、社会全体の問題を象徴している。見逃してはいけない傑作である。」
「この映画は必見。誰もが正義を知りながらも、社会的圧力と自己保身のために、その正義を踏みにじる人間の本質が描き出されている。ペテロの裏切りの故事に由来するタイトルの意味が、ラストで腑に落ちる瞬間は感動的。」

















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