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映画『ほえる犬は噛まない』徹底レビュー! | 団地を舞台に描くシニカルコメディの傑作

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ほえる犬は嚙まない

ポン・ジュノ長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』。団地で起きた小犬連続失踪事件を軸に、冴えない非常勤講師と正義感あふれる管理事務所の女性の視点が交錯するシニカルコメディ。ペ・ドゥナ出世作として名高く、後の『パラサイト』へ続くポン・ジュノ世界の原点。

ほえる犬は嚙まない:ネタバレなし感想

2000年のポンジュノ監督デビュー作ということでオススメ受けて観てみました。

デビュー作の気合いも伝わってくる独特なカメラワークと編集が面白いです。

リンダリンダリンダ出演時よりも若い、初々しいペ・ドゥナも素晴らしいです。

パラサイトにも通じる、当時の韓国を風刺した、時代を感じるブラックな描写が大変尖った趣を感じるコメディ作品でした。

原題「フランダースの犬」という皮肉も作品内に効いてます。

ほえる犬は噛まない:作品詳細

原題:플란다스의 개(フランダースの犬) 製作年:2000年 公開日:2003年10月18日 製作国:韓国
上映時間:110分 ジャンル:コメディ/ミステリー 配給:ファイヤークラッカー

ほえる犬は噛まない:予告

ほえる犬は噛まない:キャスト・スタッフ

キャスト
  • ペ・ドゥナ(ヒョンナム)
  • イ・ソンジェ(ユンジュ)
  • コ・スヒ(ウンシル)
  • キム・ホジョン
  • ピョン・ヒボン(警備員ピョン)
スタッフ
  • 監督:ポン・ジュノ
  • 脚本:ポン・ジュノ、ソン・テウン、ソン・ジホ
  • 製作:チョ・ミンファン
  • 製作総指揮:チャ・スンジェ
  • 撮影:チョ・ヨンギュ
  • 音楽:趙成禹

ほえる犬は噛まない:あらすじ

閑静な郊外のマンション。身重の妻に養われながら大学教授のポストを目指す非常勤講師のユンジュは、日々の鬱憤からマンション内に響く犬の鳴き声に強い苛立ちを覚えていた。ある夜、廊下で見かけた小犬を衝動的に地下室に閉じ込めてしまう。翌朝、飼い主が管理事務所に捜索を依頼したことで、暇を持て余していた事務所勤務のヒョンナムが犬の行方を追い始める。ビラを貼り、住民に聞き込みを行う彼女はやる気満々だが、どこか空回り気味。やがて地下室ではさらなる不穏な秘密が浮かびあがり、犬の失踪事件は奇妙な広がりを見せていく。ヒョンナムはもし犯人を捕まえればテレビに出られるかもしれないと欲を出しながら捜査を続ける。一方ユンジュは自らの行いに怯えつつも、妻の愛犬まで失ってしまい泥沼に。正義と罪悪感が入り混じる中、犬失踪の真相と意外な犯人像が姿を現していく。

ほえる犬は噛まない:解説

ポン・ジュノが2000年に発表した長編デビュー作で、韓国公開時は興行的に不発に終わったが、国際映画祭で高く評価され、日本では2003年に劇場公開。後に『殺人の追憶』の大ヒットを受けて逆輸入的に注目を集めた経緯を持つ。舞台は韓国の一般的な集合住宅で、中産階級の欲望・閉塞感・制度の歪みをブラックユーモアで描き出す手法は、後の『パラサイト』に直結するポン・ジュノ美学の原点。後に世界的スターとなるペ・ドゥナが本作でスクリーンデビューし、喜怒哀楽が豊かで愛嬌あるヒョンナム役を生き生きと演じ、本格的なキャリアの出発点となった。脚本はポン・ジュノがソン・テウン、ソン・ジホと共同執筆し、二つの主人公視点を交差させることで同一の出来事がまったく異なる様相を帯びる語り口を確立。音楽担当の趙成禹はコミカルと不気味の境界を音で体現し、撮影チョ・ヨンギュは団地の無機質な空間を詩的に捉えた。原題「플란다스의 개」(フランダースの犬)は、吠えない犬という作中の設定とともに、無力な者が踏みにじられる社会への皮肉を込めたタイトルとされている。CINEMOREをはじめ批評家から「原題から浮かび上がるテーマ性」として深読みされており、ポン・ジュノ研究には欠かせない一本。

ほえる犬は噛まない:関連サイト

ほえる犬は噛まない:配信

ほえる犬は噛まない:SNSでの主なユーザーレビュー

ポン・ジュノのデビュー作とは思えないほど完成度が高い。後の『パラサイト』を見てから振り返ると、団地という閉じた空間で中産階級のエゴや欲望を描く手法がすでに確立されていて驚く。ヒョンナムとユンジュの視点が交錯する構成も緻密で、笑えるのに後味がざわつく独特の感触がある。ペ・ドゥナが本当に良くて、表情ひとつひとつに引き込まれる。彼女の出世作というのが納得できる。動物好きは少し覚悟して観るべし。

冴えない人間が閉塞した日常の中で取り返しのつかないことをしでかす、という構図がポン・ジュノ映画そのもの。笑えるようで笑えない、でもやっぱり笑えてしまう、この宙ぶらりんな感覚が心地よい。ヒョンナムの空回りする正義感がコミカルかつ愛おしく、ラストのやるせなさが尾を引く。韓国公開時にヒットしなかったというのが不思議なほど、エンタメとしての完成度が高い作品。

原題が「フランダースの犬」というのを知ってから見直すと、主人公二人のどちらもが「吠えない」存在として描かれているのがよく分かる。不満があっても声を上げられない、理不尽な社会に噛みつけない人間たちの悲哀がじわりと滲む。シニカルでブラックなのに全体のトーンは意外と軽くて、陰鬱にならないバランス感覚がさすがポン・ジュノ。デビュー作でここまでの語り口を持っていたとは脱帽。

ペ・ドゥナのことが好きなので観たが、期待を大きく上回った。彼女の体を使った表現、特に走るシーンや慌てふためくシーンのリアリティがすごく、セリフがない瞬間ほど存在感が増す。ユンジュの情けなさも嫌いになれない人間臭さがあって、どちらも「駄目だけど憎めない」キャラクターとして立っている。ポン・ジュノ入門として見るなら、むしろこのデビュー作から観るのをお勧めしたい。

犬が関係するシーンに覚悟は必要だが、それ以上にブラックユーモアと社会批評の密度が濃くて映画としての豊かさを感じた。地下室の老警備員が放つ不気味さ、マンションというコミュニティの薄情さ、メディアに出たがるヒョンナムの俗物性。どれも笑えるようで笑えない。犯人が最後まで裁かれないオチが、現実の不条理をさらっと突きつけてくる。これがデビュー作というポン・ジュノの才能に今更ながら震えた。