/* THKアクセス解析 */
管理人ayu

福岡在住。日々の暮らしがちょっと豊かになるような、映画・音楽・ラジオなど、様々なカルチャーを紹介する2000年頃から続いているwebメディアです。
SNSでも毎日、情報を発信していますので、ぜひ覗いてみてください。
これからもどうぞよろしくお願いします。

詳細な自己紹介 → このサイトについて
はじめての方にオススメ → 今月の人気記事一覧

twitter  instagram

『聖なるイチジクの種』国外脱出した監督が命懸けで創作。オンライン指示出しで撮影された映画史上最強のサスペンス

映画・ドラマPrimeVideo,U-NEXT,宇多丸

聖なるイチジクの種

『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭最高賞・金熊賞を受賞した鬼才モハマド・ラスロフ監督が、イラン当局による弾圧を受けながらも、命懸けで創作した傑作サスペンス『聖なるイチジクの種』。イラン政府の政治的抑圧と家族崩壊を描いた本作は、第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、上映後には約12分にもわたるスタンディングオベーションが送られた。第97回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネート。第82回ゴールデングローブ賞最優秀非英語映画賞ノミネート。家庭内から消えた一丁の銃をめぐり、予審判事イマンと妻・2人の娘の疑心暗鬼が加速していく——国家権力に追従する男が、最後に直面する家族崩壊の地獄を描いた167分の究極のサスペンス。

聖なるイチジクの種:ネタバレなし感想

イランという国の情勢や文化や、公開にあたり当局から弾圧を受け文字通り決死の覚悟で公開に踏み切ったという経緯を踏まえると、

大変貴重な作品であることが浮き彫りになるサスペンス。

家族内から消えた銃をめぐって家族全員が疑心暗鬼に陥る様を、それぞれの視点で皮肉を込めて描いた心理描写が秀逸でした。

映画「聖なるイチジクの種」:作品詳細

原題:The Seed of the Sacred Fig(ペルシア語:دانه‌ی انجیر معابد) 製作年:2024年 
公開日:2025年2月14日 製作国:フランス・ドイツ・イラン合作 上映時間:167分 
ジャンル:サスペンス/ドラマ 配給:ギャガ レーティング:G 

映画「聖なるイチジクの種」:予告編

映画「聖なるイチジクの種」:キャスト・スタッフ

キャスト
  • イマン(予審判事・主人公):ミシャク・ザラ
  • ナジメ(妻):ソヘイラ・ゴレスターニ
  • レズワン(長女):マフサ・ロスタミ
  • サナ(次女):セターレ・マレキ
  • サダフ:ニウシャ・アフシ
スタッフ
  • 監督・脚本:モハマド・ラスロフ
  • 撮影:プーヤン・アガババエイ
  • 編集:アンドリュー・バード
  • 音楽:カルザン・マムード

映画「聖なるイチジクの種」:あらすじ

テヘランで妻ナジメと2人の娘レズワン、サナとともに暮らす国家公務員イマン。20年間にわたる勤勉さと愛国心が認められ、念願だった予審判事への昇進を果たす。だが、新しい職業の実態は、ヒジャブ着用をめぐり拘束された女性の不審死に対する市民による政府抗議運動が高まる中、反政府デモ逮捕者に対して不当な刑罰を科すための国家の下働きだった。

イマンは報復の危険性から家族を守るため、国から護身用の銃を支給される。だがある日、その銃が家庭内から忽然と消える。当初はイマンによる紛失と思われたが、捜索が進むにつれて妻ナジメ、長女レズワン、次女サナへの疑いの目が向けられていく。

誰が?何のために?銃はどこへ消えたのか。家族の間に疑心暗鬼が蔓延し、互いに不信感を募らせていく。そして、家族さえ知らないそれぞれの秘密や疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす——。

映画「聖なるイチジクの種」:解説

本作の最大の特徴は、監督モハマド・ラスロフが、イラン当局による弾圧と実刑判決を受けながら、命懸けで創作した傑作であるという点にある。ラスロフはイラン政府の政策を批判した映像製作によって、国家安全保障に反する罪で懲役8年、鞭打ち、財産没収の実刑判決を受けた。その状況下で、本作は2023年12月から2024年3月にかけて秘密裏に撮影された。

ラスロフはすでに逮捕・投獄された経験があったため、警察に踏み込まれた場合にキャストやスタッフに危険が及ぶ可能性を懸念し、多くのシーンを現場に監督不在の状態で撮影。ラスロフはオンラインで撮影の指示出しを行うという、極めて特殊な製作体制が実現されたのだ。その後、2024年に国外へ脱出したラスロフは、28日間かけてカンヌ国際映画祭に向かい、『聖なるイチジクの種』のプレミアに参加した。

映画的な仕掛けも秀逸である。2022年にイランで実際に起きた、ヒジャブ着用をめぐり拘束された女性の不審死に対する市民による政府抗議運動を背景に、その渦中で一人の予審判事の家族が崩壊していく様が描かれる。国家権力に追従する男が、その過程で失ってしまったもの——人間としての良心、家族の信頼、そして自己の尊厳——それらが銃という「喪失」を通じて可視化される。

主演のミシャク・ザラは、勤勉な国家公務員であることで自分たちの「安全」を手に入れたと信じている男を、深い無意識の罪悪感と共に表現。妻ナジメを演じるソヘイラ・ゴレスターニは、夫の変貌に気付きながらも、それでも家族を守ろうとする妻の複雑な心理を見事に体現。長女レズワン役のマフサ・ロスタミと次女サナ役のセターレ・マレキは、親の葛藤に巻き込まれながら、自らも政治的現実と向き合わざるを得ない思春期の娘たちの苦悩を真摯に演じている。

撮影をプーヤン・アガババエイが担当した映像は、テヘランの新しい邸宅というプライベートな空間を、政治的圧力が侵食してくる現実をきめ細かく描き出す。編集をアンドリュー・バードが担当し、銃の消失を中心に据えた構成は、家族の秘密が次々と露呈する過程を緊張感に満ちた形で表現している。

本作は、単なるミステリー・サスペンスではなく、権力国家における個人と家族の関係、そして良心の喪失という普遍的なテーマを問い直す作品である。第77回カンヌ国際映画祭での約12分にもわたるスタンディングオベーション、第97回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート、第82回ゴールデングローブ賞最優秀非英語映画賞ノミネート、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞外国語映画賞受賞——これらの栄誉は、本作が映画史に記録される傑作であることを物語っている。

映画祭での初上映時には、多くの観客が感動のあまり涙を流し、スタンディングオベーションが続いたという。その反応は、映画が政治体制を超えた人間の普遍的な苦悩を捉えた傑作であることを証明している。

映画「聖なるイチジクの種」:関連サイト

映画「聖なるイチジクの種」:配信

映画「聖なるイチジクの種」:SNSでの主なユーザーレビュー

「カンヌ映画祭でのスタンディングオベーション約12分というのは伊達ではない。本作の完成度の高さ、そして監督の覚悟が伝わってくる映画。国家権力に追従することで『安全』を手に入れたと信じる男の無意識の罪悪感、それが銃という『喪失』を通じて露呈される過程は、映画として最高レベルの出来。」

「イラン当局の弾圧を受けながら、それでも映画を創作し続けるモハマド・ラスロフ監督。その覚悟がこの作品に映し出されている。家庭内から消えた銃をめぐり、家族の疑心暗鬼が加速していく167分。一瞬も目が離せない。」

「2022年に実際に起きたイラン社会の政治的抑圧を背景に、一つの家族が壊れていく過程が描かれている。単なるサスペンスではなく、権力国家における個人と家族の関係、良心の喪失という普遍的なテーマが内包されている傑作。」

「ミシャク・ザラとソヘイラ・ゴレスターニの演技が素晴らしい。勤勉な公務員として自分たちの『安全』を信じていた男と、その変貌に気付きながらも家族を守ろうとする妻。その複雑な心理が見事に表現されている。」

「長女と次女も含めた4人の家族が、政治的現実と向き合わざるを得ない過程が切実に描かれている。親の葛藤に巻き込まれながらも、思春期の娘たちが何を思うのか。その心理描写が秀逸。」